疾患別アプローチ

脳卒中について

脳血管障害とは虚血あるいは出血により脳の一部の領域が一時的、

または持続的に傷害され脳の細胞が死んでしまう病気です。

日本人の死因第3位です。

脳の機能はその場所ごとに決まっており、症状は虚血か出血かの原因によるのではなく、脳のどこを障害されたかによります。

脳血管障害とは・・・

・虚血性病変【脳梗塞(①脳血栓②脳塞栓)、一過性脳虚血発作】

・出血性病変【脳出血、クモ膜下出血】

※「脳卒中」は、脳に血液が流れなくなることによって脳の神経細胞が壊死する病気全般を示す言葉です。その原因によって、「脳梗塞」「脳出血」に分類されます。

最初に脳梗塞から説明していきます。

脳梗塞】 

脳の血管が詰まったり、狭くなったりして血流が悪くなることが原因(脳卒中の7割)

詰まるのも①脳血栓②脳塞栓の2つのタイプがあります。

①脳血栓(1番多い:特にメタボ要因の男性)

動脈硬化を起こして血管が狭くなり、そこに血栓ができて血流が阻害されることが原因です。

※約半数が安静時に起こります!!

脳血栓症にもまた3種類あります!

1.ラクナ梗塞:脳の深部にある細い15mm以下の小さな脳梗塞

→穿通枝(せんつうし)という細い血管が詰まって起こるもの、要因は高血圧です!

(高齢者や高血圧症の人が血圧変動を繰り返すことで起こりやすく、症状がないこともあり、多発すると認知症になると言われています。)

2.アテローム血栓性脳梗塞:脳内の比較的太い動脈や頸動脈で起こる

→ドロドロした粥状のアテロームで動脈が狭くなることが原因です。

要因は喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病が動脈硬化促す原因になります。

→血管壁にコレステロールが溜まることで動脈硬化が生じ血流悪化します。

3.心原性脳梗塞:心臓の中に血栓ができて、頸動脈や椎骨動脈へと流れ込み、脳の血管まで到達して血管を閉鎖

→突然発症して、意識障害起こします。

要因は心房細動などの不整脈や心臓弁膜症の心疾患の方に起こります。

加齢に伴って動脈硬化が起きるリスクは高まり、血管の通り道が狭くなって血液の流れが悪くなってしまい、進行すると血栓ができてしまい、脳の血管を塞いでしまい、脳梗塞が引き起こされると言われています。

※早期発見(症状が出現して4〜5時間以内なら)t-PAなど血栓を溶かす治療が使えこれにより血栓を溶かし、血流を再開することで、後遺症をできるだけ軽くすることが出来ます。

②脳塞栓(血栓の出所が脳ではありません)

心房細動など心臓内にできた血の塊(血栓)が流されていく途中で、脳動脈に詰まってしまうことが原因です。

※動脈壁に動脈硬化は起きていません!!

心臓疾患のある人、特に心臓弁膜症や心房細動などの不整脈により形成されたな心内血栓が主な原因で、活動時に起こります

脂肪やコレステロールなどがドロドロした状態になった異物が、動脈内に付着することで起きる動脈硬化に生じた血栓が剥がれても脳塞栓の原因になります。

脳の大脳は、その部位によって、司る機能がそれぞれ違っているので、脳梗塞の症状はそれぞれ起きた場所により、それぞれ違ってきます。

言語を司る部位に脳梗塞が起きると・・・失語症

運動を司る部位に脳梗塞が起きると・・・歩行障害

一過性脳虚血発作(TIA)

一時的に脳の血管は詰まるが、手足の麻痺や意識障害などの発作が、約24時間以内でおさまり、すぐに流れが再開する脳梗塞の前触れとして起こる一過性脳虚血発作(TIA)もあります。

脳の血管に血液の塊である血栓が一時的に詰まるために起こりますが、詰まった血栓がもろいため短時間で溶けてしまいます。すると、血流が再開し、症状は自然に治まります。

しかし、TIAを起こした人の3-4割が、その後に脳梗塞を発症します。特に、TIAを起こして1-2日間が危険です。放置した場合、翌朝に脳梗塞を発症する危険性もあるので、その日のうちに救急病院へ行くことが大切です。

※高齢者は脱水で血液が粘るために脳梗塞を起こしやすくなります。

脱水で少しずつ脳梗塞を起こしているのに気づかず症状がゆっくり進行していくこともあるので、脱水、水分補給は十分注意が必要です。

脳梗塞脳出血
脳の血管が詰まる脳の血管が切れる
脳の血管の動脈硬化(脳血栓)心臓から血栓が脳へ移動(脳塞栓)脳の中に出血(脳出血)クモ膜下腔に出血(クモ膜下出血)
安静時に起きることが多い日中活動時に起きることが多い
頭痛はないことが多い頭痛がすることが多い
意識障害は軽いか、ないこともある意識障害が起きることが多い
高血圧でなくても起こる高血圧の人がなりやすい

※看護師・介護士が知っておきたい 高齢者の解剖生理学より参照

脳出血・クモ膜下出血

○脳の中で脳の血管が破れて出血=脳出血

長年にわたって高血圧症の患者さんは、脳に酸素や栄養を送っている脳動脈も、変性し脆くなっています。この変性は特に細小動脈に起きやすく、動脈壁が長年の高血圧に耐えきれず、破裂し、脳の中へ出血してしまいます。

※白血病などの出血性の疾患や脳動脈の奇形や外傷もその原因になります。

脳内部の出血が脳出血で脳幹出血、小脳出血など出血部位の名前がつき、脳の指令が通る内包の近くの出血が多いです。

大脳出血:意識障害、大脳の右半分→左半身麻痺、(左半分→右半身麻痺)

視床出血:意識障害の度合い強く、高熱、知覚障害、運動障害

小脳出血:吐き気やめまい、立ち座りができなくなり、ひどくなると昏睡状態

橋出血:急激に昏睡状態になり、手足が麻痺、呼吸困難(チェーン・ストークス呼吸)

○脳の表面の大きな血管にできた瘤が破裂して、クモ膜の下に出血

=クモ膜下出血

脳へ行く重要な動脈が走るのがクモ膜下出腔で、ここの動脈が切れるのがクモ膜下出血

死の危険度も高いと言われています。

クモ膜下出血の多くは脳動脈瘤から血圧が滲み出たり、脳動脈瘤の破裂で起こります。

脳動脈の脳底にある脳底動脈輪に動脈瘤ができる場合が最も多く、これは先天的なものと動脈硬化などによってできるものがあります。

症状は激しい頭痛と意識障害が多くみられて片麻痺は下肢に多く生じます。

出血後に再出血したり、脳血管の※攣縮や※水頭症が起きます。

※攣縮・・・痙攣性の収縮

※水頭症・・・脳脊髄液の循環や吸収に異常が生じ、脳脊髄液を産生する場である脳室が拡大する病気のこと 

【動脈瘤の治療法】:破裂させないために行う!!
  • ・動脈瘤の柄にクリップをかける
  • ・ガーゼの切れ端や筋肉片で包み込む
  • ・バイパスとなる血管があれば動脈瘤の上下をクリップで挟む

症状と後遺症

異変を感じたときに、チェックの目安となるのが「FAST」!!

Face:顔が歪んでいないか

Arm:片手が下がっていないか

Speech:「生き字引」をうまく言えないと要注意

Time:発症時間の確認(治療を始めるまでの時間で使える薬が変わってくるため)

・これまで感じたことのない頭痛

・まっすぐに歩けない

・左右どちらかの顔がだらんと垂れる(片側の麻痺)

・急に箸や茶碗を落とす

・呂律が回らない

手足の麻痺

・片麻痺(運動障害)

・痺れ(感覚障害)

言語障害

・言葉が出にくい、相手の言っていることがわからない

認知障害

・物忘れ、人の顔がわからない、感情のコントロールがうまくいかない

高次脳機能障害

・記憶障害:物を置いた場所を忘れる、新しいことを覚えられない

・注意障害:二つのことを同時の行うことができない、集中力が続かないといった症状

・遂行機能障害:計画・実行ができない

・行動障害:感情をコントロールできない

症状が出ない脳卒中もある!?

高齢者では症状がほとんど出ずに、なんだかおかしいと思っているうちにだんだん動けなくなり認知症になったりするケースがあります。

実際私が見ていた寝たきりの患者さんが脳梗塞になりました。

その日の朝起きてヘルパーさんが反応がいつもと違うことに気づきましたが、時すでに遅し・・・前日の23時まで元気にお話しされていたそうなんで、夜中のうちに脳梗塞になり一気に進んでしまったようでした。そこから食事も取れず、話せずになり2週間ほどで亡くなりました。

軽い脳卒中を見つけるテスト

ロンベルク徴候(目を閉じて立つとふらふらする=脊髄や末梢神経の障害でも)

※目を開けていても揺れる(→内耳の平衡感覚障害、小脳障害)

バレー徴候

《上肢》目を閉じて両手を前に伸ばして手のひらを上に向けてその状態を維持してもらう

→麻痺側は回内し、下降する

《下肢》うつ伏せで両膝関節90度靴極してもらいそのまま維持してもらう

→麻痺側は下降する

バビンスキー反射

足底を踵から指の方へこする

→母趾が背屈し、他の足趾が開く動きをする(→錐体路障害だと陽性)

鑑別疾患

問診や診察から脳卒中かどうかは大体わかるようですが、

脳卒中と類似している症状

・てんかん(脳の神経細胞の電気活動が一時的に乱れる):ぼーっと意識なくなる、受け答えが不明瞭になるような発作

・代謝性脳症(肝障害、腎障害などで意識状態が悪くなる状態)

・脳炎(ウイルスによって起こる:発熱、意識障害、痙攣、精神症状)

・多発性硬化症(脱髄疾患で、脳や脊髄、視神経が障害される病気)

・脳腫瘍(脳の中にできた腫瘍が圧迫して、鋭い頭痛や吐き気がする)

・脳動脈瘤(脳の血管の一部が膨らんで弱くなる→クモ膜下出血につながることもある)

・脳動静脈奇形(脳の一部で、異常な血管を介して動脈と静脈がつながっている状態、けいれんを起こしたりする)

・もやもや病(脳の太い血管が詰まり、補うために周りから細い血管が発達して、鋭い頭痛を引き起こす)

採血、X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)のほか、脳波、髄液検査など必要な検査を行うようです。
また、脳卒中のなかでも脳梗塞と頭蓋内出血(脳出血、クモ膜下出血)を鑑別する必要があります。

脳梗塞では、症状が起こってからどのくらい時間が経っているかによって治療内容が違ってくるため、その症状にいつ気がついたか、いつまでは変わりなく過ごしていたかなど、時間をはっきりさせることが重要になるようです。

脳出血は、病気を起こした直後からCT画像で診断できます。

クモ膜下出血もCT画像で診断できますが、時間が経っている、出血量が少ない場合は、髄液検査が必要になることがあります。

予防法・対策法

危険因子のチェックから!!

○直せる生活習慣→喫煙、多量の飲酒

○治せる危険因子→高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病

△避けることができない危険因子→年齢、遺伝的素因

定期的な健康診断と生活習慣の見直し・適度な運動が大事

  1. 自分の血圧を知り、コントロールする心がけを
  2. 塩分控えめの食生活と、コレステロールを減らす
  3. 仕事を離れてリラックスできる趣味を持つ。適度な運動も必要!
  4. 脳ドックを受診し、脳の健康状態を常に把握する

不整脈の治療

脳塞栓症は高齢者や高血圧の方、糖尿病の方に多い

→抗凝固剤の内服で予防

高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療

糖尿病は慢性的に血糖値が高くなる病気

→糖尿病も血管に負担がかかり、特に目の網膜など微小な血管に障害が起こります。(糖尿病網膜症)糖尿病になれば腎臓にも影響が出て血液や血管の障害にもつながります。糖尿病の人は健康な人より脳梗塞の発症率が高いため、脳卒中の予防には血糖値の管理も重要です。

コレステロールについては、特に悪玉と言われるLDLコレステロールが高いと、心臓につながる大血管の障害を引き起こします。血管の壁にコレステロールがたまって動脈硬化を引き起こし、脳梗塞のリスクにつながります。

リハビリ

急性期のリハビリ(発症から数日〜約2週間)

再度危険な状態になりやすいので、バイタルサインに注意しながらベッド周辺でのリハビレテーション実施します。

回復期リハビリ(発症から5〜6ヶ月)

血圧が安定してくる時期になってきます。症状に応じたリハビリを行なっていきます。後遺症が改善する可能性が高い段階でもあり、歩行や食事、入浴の日常生活動作なども集中的に行なっていきます。

維持期のリハビリ(発症から6ヶ月以降)

通院や自宅でリハビリを受け。て日常生活動作の維持向上を目指します。目標設定を行い、それに向けてリハビリを行うと、より快適な日常生活を送れるようになっていきます。

マッサージ・ストレッチ・鍼灸・機能訓練

マッサージ

脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血などの脳血管障害の後遺症では、上肢は屈曲拘縮(曲がる筋肉が強く働く)になり、下肢は伸ばす筋肉が強く突っ張った状態になることが多いです。

・片麻痺の方の麻痺側でも動かせる範囲があるので関節をしっかり動かし、血流を促進して関節を柔軟にします。

・健側は何をするにも常に動かし、使われるため知らないうちに負担が大きくかかっているため、筋肉が筋緊張していることが大半なのでしっかりほぐしていきます。

・筋緊張が強い筋肉の腱もほぐしていきます。

マッサージ→関節を動かす→ストレッチを行う、を繰り返していきます。

・ストレッチは1分間×3セットしっかり行うと伸びやすくなります。

※動かしたことで、すごく痺れが強く出てしまう方もいるので痛みの有無、様子聞きながらが個人的にはいいと思います。

脳からの信号の異常での痺れの患者さんの痺れはなかなか取れないのが現状です。

ただその中でも痺れの感覚が変化する動きや体勢、時間などがないかヒアリングが大事になってきます。

痺れが出ている部位から脳までの神経経路に沿って施術を行うと緩和しやすいケースもありました。

鍼灸

・大衝、足三里、陽陵泉、合谷、八風、天注、風池、中府、三陰交、曲池、

列缺、十宣(じっせん:指先の先端)

・足裏へ灸(踵、母趾の下、小趾の下付近):感覚麻痺

機能訓練

大体の方が病院でリハビリを受けてから、訪問マッサージのサービスを受けられる方が多いです。

身体に麻痺がある場合、

「麻痺に対する訓練」と「残された能力維持する訓練」を同時に行うことが大切です。

・歩行練習:装具などを用いて、歩く練習、バランス、姿勢保持

・基本動作練習:起き上がる、立つ、座る動作

・日常生活動作練習:日常生活に必要な階段の上り下り、トイレ動作、困っている動作の練習

個人的には自分で行える範囲はご自身で動いてもらい、それをサポートするスタンスでいます。片麻痺があっても座位保持、立位保持、移乗動作、起き上がり動作ができる方が多いです。しっかりどの動作が行えて、どの動作が苦手かを問診で把握出来ているとサポートしやすくなりますし、後々動きの評価をしやすくなります。

この記事を書いた人

とらこ
・鍼灸マッサージ師
(3児の母 2023年にトライアスロンに挑戦したいアラフォー)