疾患別アプローチ

後縦靭帯骨化症についてのアプローチ方法

ここでは後縦靭帯骨化症について解説したいと思います

・概要(どういう病気?どういう状態?)

後縦靭帯骨化症とは、脊椎を支える靭帯のひとつである後縦靭帯が通常の何倍もの厚さになり骨へと変化し、脊髄が圧迫される疾患です。

後縦靭帯骨化症は、日本では難病に指定されており、50歳以上高齢者の男性に多いと言われています。

遺伝や代謝異常など全身的因子が絡み合って発症すると考えられていますが、原因は完全には明らかにされていません。

椎骨が積み重なるだけでは骨同士のつながりが不安定であるため、骨同士に適度な動きと安定性のために靭帯が存在し、椎体と呼ばれる骨の背中側で後縦靭帯は脊髄の前側にあります。

腹側からの並びとしては 

椎体 ・【後縦靭帯・脊髄・黄色靭帯

※【後縦靭帯・脊髄・黄色靭帯】脊柱管内にあります。

・後縦靭帯は頚椎を縦に繋いでおり、脊柱管を内側から補強する役割をしています。

・黄色靭帯は椎弓を繋ぐ役割をしています。

後縦靭帯が存在する背骨の内部のトンネル「脊柱管」には、神経の束である脊髄が走行しているため、後縦靭帯骨化症では脊髄が圧迫され、さまざまな神経症状が引き起こされます。

・頚椎に多い・・・後縦靭帯骨化症

・胸椎に多い・・・黄色靭帯骨化症

症状 臨床所見

症状は基本的に脊髄の圧迫性障害で、

頚髄症では痙性四肢麻痺、また胸髄症では初期症状は下肢の痺れと脱力になります。

診断にはX線写真が大切になってきます。X線で診断が困難骨化はCTやX線断層撮影で発見しやすいです。

頸、肩の症状

頸や肩甲骨の周りが痛み、動きが悪くなり、肩・肩甲骨の関節可動域が狭くなります。

手、腕の症状

手や指、腕のしびれ感は最も多くみられる症状です。お箸をうまく使えなくなるなど、細かい作業が難しくなる巧緻運動障害が出てきます。症状が進行すると、力が入りにくくなる脱力症状がみられるようになります。

下肢の症状

手や足がつっぱって動かせない痙縮または痙性歩行、手袋や靴下を履いているような部位に見られる特徴的な感覚障害がみられます。

自律神経症状

尿や便が出にくいといった膀胱直腸障害があります。

・鑑別

後縦靱帯骨化症では上記の4つの症状が1つだけ出るのではなく、さまざまに組み合わされて出るのが特徴と言われています。頸・肩・手・腕の症状が出て、病気が進んでから下肢・膀胱直腸障害が出やすいようです。

頚椎に関する病気では・・・

頚椎症性脊髄症・・・加齢変化による頚椎症(椎間板の膨隆・骨のとげの形成)の変化によって、頚椎の脊柱管(骨の孔)の中にある脊髄が圧迫されて症状が出ます。両下肢に力ははいるのに(筋力低下はないのに)、つっぱったような歩き方、ギクシャクした歩き方になります。

頚椎椎間板ヘルニア・・・一側の肩や手の特定の領域に激しい痛みや放散痛が生じたり、両手に痺れが出てきたり、巧緻運動が徐々に出来にくくなったり、両足が足先から段々としびれてきたり、歩行がなんとなく不自由になってきます。

頚椎症性神経根症・・・頚椎の老化に伴う変化で、椎間孔が狭くなったために神経根だけが圧迫された状態で、片側の腕や手の痺れ・痛み・脱力を感じます。

・予後

術後長期予後は術後5年を境に、徐々に神経症状が再悪化する傾向が見られる。頸椎の改善率は50%程度とするものが多く、脊髄麻痺の悪化は約4%、髄節性運動麻痺は5~10%程度と報告されている。

引用元:難病情報センター

https://www.nanbyou.or.jp/entry/257

・徒手検査

神経学的検査(徒手筋力検査、知覚検査)で筋肉・神経の障害の有無を見ることが大切だと思います。

個々の筋力の低下について評価できますし、日常生活動作を介助なしに行えるかどうかの評価や、神経障害の部位を知るためなどにも必要な検査になります。

・症状に対してどうアプローチする

マッサージ、ストレッチ、鍼灸、機能訓練

・マッサージ・

施術は症状を緩和させる目的で、痛み痺れの症状が出ている部位の背骨に近い部分からマッサージ施術を行います。頚椎部分は触りません!

思うように動かせない部分が出てくるため、そこをカバーするように他の筋肉が過剰に使われ負担がかかっていることが多いので、しっかり動作を見てどこの筋肉が使えていないか、どこの筋肉が使われすぎているかを見る必要があります。

関節可動域も狭くなってくるため、関節可動域を維持していけるように大きくしっかり周りを見ながら行います。

・ストレッチ・

関節可動域も狭くなってくるため、関節可動域を維持していけるように大きく行います。それから四肢全体の筋肉を伸ばすようなストレッチを行います。麻痺による筋力低下で、運動量が低下していますので、機能低下や運動低下を起こしている筋肉は弾力性がなくなり硬くなります。筋肉の機能維持をさせる為に、施術の中でストレッチを行います。

・鍼灸・

鍼灸は疼痛がでている筋肉の経穴に鍼・灸施術を行います。頚椎部分は行いません!

・機能訓練・

名称内容効果
関節可動訓練関節を動かす硬くなった関節の動きを良くする、筋肉の血流改善
筋力トレーニング手足・全身の筋力回復、強化麻痺した筋肉の筋力回復・維持
平衡感覚トレーニング座る、立つ、歩くのバランスを養う日常生活動作を行い、平衡感覚養う
特定医療費(特定難病)受給者証を持っていても・・・

その方は後縦靱帯骨化症の方で「特定医療費(特定難病)受給者証」をお持ちでした。これは一部の医療サービスや介護サービスに係る費用について助成を使えるというものです。

訪問看護・訪問リハビリ・介護療養施設サービス等には助成対象なんですが、私達の「はり・きゅう・あんま・マッサージの費用」は助成対象外なんです。

ご本人の意向もあり、障害者手帳などの申請もされていなかったので1割負担で施術していらっしゃいましたが、今回特定医療費受給者証の自己負担額も2500円になり、せっかくなので特定医療費を使っての方法を行いたいというお話になり、施術は中止になりました。(私の技術不足もあったのかもしれません)

もし助成できる対象になっていたら難病の方にもはり・きゅう・あんま・マッサージを気軽に受けていただけて、少しは疼痛の軽減や血行促進などの効果を提供できるんですが・・・・残念です。