疾患別アプローチ

脊柱管狭窄症に対するアプローチ方法

ここでは脊柱管狭窄症について解説したいと思います。

・概要(どういう病気?どういう状態?)

脊柱管狭窄症は加齢など様々な原因で椎間板や黄色靭帯が肥厚し、神経が通る管(脊柱管)が狭くなることで神経が圧迫を受け、神経の血流が低下させる疾患の総称です。

・症状、臨床所見

主な症状
  • 腰痛 
  • 歩行時の痛み
  • 下肢のしびれ感
  • 冷感
  • 違和感(※知覚異常:L5やS1領域に多い)           ※脊柱管狭窄症では2〜3の神経根にかけて両側性に出現します
  • 《間欠性跛行》が50%〜60%の頻度で見られます。
  • 体を伸ばすと痛み増悪・前かがみになると寛解
ココを見て!

姿勢

骨盤前傾? 反り腰?

体を伸ばすと痛みは?前かがみになると楽?

動作

歩行時などに体幹の力が抜けて腰が反っていない?

問診の時には「前かがみで楽になりますか?」や「150m〜200mくらい歩いて休憩したらまた歩けますか?」など具体的に聞くと間欠性跛行の有無がわかります。

間欠性跛行には2つのタイプがあり、

神経性:脊柱管狭窄症

血管性:末梢動脈疾患

との鑑別が必要になります。

血管性の代表例として【下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)】

足の動脈に動脈硬化が起きて、血管が狭く・詰まったりすることで、血液の流れが悪くなる病気です。【症状:間欠性跛行・糖尿病有無・足の冷感・足の変色】

足背動脈の触診で拍動の有無を確認しましょう。

鑑別

脊柱管狭窄症を疑われた場合は、病歴の問診や身体診察と合わせて画像による診断が行われます。

主にMRI検査によって、背骨の変形、椎間板ヘルニア、骨折など骨の異常の有無や、神経が圧迫されている様子、圧迫の重症度などを評価することができます。

さらに詳細な情報が必要な場合には、脊髄造影という検査が行われるようです。骨の状態や神経の狭窄の程度をより詳しく調べることができるそうです。

経験上、ケアマネージャーや患者本人・家族から「脊柱管狭窄症と診断されている」と情報開示があってから介入するケースがほとんどです。

予後

神経根症状は自然寛解傾向があるが、馬尾症状にはなく、機能改善の予後不良なものとして①安静時にも強いしびれや痛みがある

②明瞭で強い知覚障害がある

③著しい筋力低下と筋萎縮を認めるもの

④罹病期間が既に長期に及んでいるものがある。

すでに脊柱管狭窄症を発症している場合にはOPE後の方も多くいらっしゃいます。術後に痛みがなくなる方もいれば、術後2〜3年は痛くなかったのに最近痛み出した、さらには手術前より痛みが悪化したという方もいます。

痛みを和らげる薬、湿布等(消炎鎮痛剤)、末梢血管を広げて神経の血流を増やして症状を和らげる(リマプロスト)、過剰に興奮している神経を鎮める薬(プレガバリン、オピオイドなど)を服用されている方が多いです。

弾性コルセットをしていらっしゃる方が非常に多い印象です。

徒手検査

下肢伸展挙上(SLR)テストは陰性のことが多く、膝蓋腱反射やアキレス腱反射は80%以上で消失します。

検査法の流れ

問診

動作チェック(腰部屈曲・伸展・側屈・回旋)

  どの動作で、どこに、どんな痛みでるか

圧痛検査

  左右同じところなのか?筋肉?関節?

スペシャルテスト、仮説検証作業

  問診結果、どの動作で痛いか圧痛部位によって疾患を想定し、必要な検査行う

症状に対してどうアプローチするか

これで陽性なら脊柱管狭窄症!

●下肢神経テスト(4つ)

  ★kempテスト 

   SLR 

   Kボンネットテスト 

   FNS

●PLFテスト(腰椎後方組織の拘縮検査)

●足背動脈触知検査

※(神経性・血管性)間欠性跛行どちらか鑑別するため

●拘縮テスト(3つ)※症状に関わらす両側行う

  OVER  

  内転筋拘縮テスト 

  トーマステスト 

 (★kempテスト陽性のこと多いが、年齢と間欠性跛行で判断します)

マッサージ・ストレッチ・鍼灸・機能訓練

マッサージでは、筋緊張亢進部位を中心にアプローチを行いますが、

腰が痛いから腰だけのマッサージではそこだけ筋緊張緩和になるだけで、すぐに痛みが戻りやすくなってしまいます。

腹部・骨盤周囲・臀部・下肢はもちろんのこと前傾姿勢になっていることも多いので大胸筋、肩甲骨周囲も触っていき、全体のバランスや左右での硬さの違いが発見できるとどこに重点的にアプローチするべきかが見えてきます。

ストレッチでは内転筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・大腿四頭筋のストレッチを行い、骨盤前弯を減少させるのがポイント!

腰椎後方組織のストレッチ:PLF(腰椎の棘突起同士を離し伸ばす動作)を行うと骨盤前傾が減少され痛みの軽減につながる可能性があります。

【患者さんが出来る体位でやってみよう!】

仰向けで膝を抱える

横向きで膝を抱える

椅子に座り前に体をできるだけ倒す

↑どれもやることは同じで体位だけの違いです。背中を丸くして腰椎を伸ばす意識が大事です。訪問では高齢者の方が多いため、股関節の硬さなどもあり膝を抱えられない方も多いです。そのような患者さんには施術者がアシストして棘突起を伸ばす動作を行う、もしくは多裂筋を剥がすような手技をするといいと思います。

鍼灸治療では、脊柱の際にある多裂筋・脊柱起立筋を中心に臀部・下肢の筋緊張緩和を図り、血行不良改善をしていきます。

経穴:崑崙・申脈・陽稜泉・委中・殿中・大腸兪・腎兪・阿是穴

参考書籍

・姿勢の教科書 正しく理想的な姿勢を取り戻す

・姿勢の教科書 不良姿勢を正しくする 上肢・下肢編

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この記事を書いた人

とらこ
・鍼灸マッサージ師
(3児の母 トライアスロンに挑戦したいアラフォー)