疾患別アプローチ

糖尿病についてのアプローチ

ここでは糖尿病について解説したいと思います。

概要(どういう病気?どういう状態)

糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気です。

血糖値の上昇が感知されると膵臓から【インスリン】と呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉では【グリコーゲン】と呼ばれるエネルギーに変わり、脂肪としても蓄える仕組みが作動します。この仕組みが備わっているため、私たちの血糖値は飲食しても一定に保たれています。

平成28年の厚生労働省の調査では糖尿病有病者1000万人、糖尿病予備群も1000万人と推計されています。男女の差はそれほどみられず、男女とも有意に増加しています。

日本人はアメリカ人に比べ、インスリンを出す能力が弱いそうです。

・痩せてても糖尿病になりやすい日本人

・太っているけど糖尿病じゃないアメリカ人

症状 臨床所見

初期には症状が出にくく、その発見及び診断には臨床検査の役割が大きいです。

ポイントは

①血糖値

②HbA1c※過去の2、3ヶ月の血糖値に相関

※HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。

・血糖値の低い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が少くなるので、HbA1cは低くなります。

・血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなるので、HbA1cは高くなります。

一番多いパターン(2つ合わせて糖尿病の診断)

適当な時間で

①血糖値 200 以上

②HbA1c 6.5%以上

次に多いパターン(これも糖尿病の診断)

絶食状態で

①血糖値 126 以上

②HbA1c 6.5%以上

高血糖による症状として、

高血糖による症状

口渇、多飲、多尿、全身倦怠感、体重減少、食欲旺盛、目のかすみ、

排尿回数の増加

合併症による症状として、

糖尿病性網膜症や白内障による視力低下、神経障害による四肢の痺れがあります。

これは血漿浸透圧が上がること=腎透析圧も高まるためです。

糖尿病には2つのタイプがあります。

1型糖尿病:遺伝性素因に、ウイルス感染や免疫異常などが加わって発症します。若者に多く、痩せている方に発症 急に発症 インスリンの補充が必須

2型糖尿病:遺伝性素因に、栄養の過剰摂取、運動不足などの環境因子が加わって発症します。中年の肥満者に多いです。インスリンが必ずしも必須でない

※両者はインスリンの分泌能の違いだけでなく、病因が異なります。

病歴:家系内に糖尿病患者がいることが多い

臨床症状:口渇、多飲、多尿などの症状がある

血糖検査:尿糖、血糖、HbA1c、フルクトサミン、1.5-AG、グルコアルブミンなどが異常になる

ブドウ糖負荷試験:75gのブドウ糖を経口負荷して、血糖、尿糖を調べる

内分泌検査:甲状腺ホルモン、ステロイドホルモンなどを測定し、甲状腺や副腎疾患による二次性の糖尿病を区別する

合併症の診断

・網膜症:眼底検査

・神経障害:神経伝達速度検査

【末梢:知覚障害(感覚にぶい・火傷)】【中枢:意識障害】

・高血糖:糖尿病性ケトアシドーシス※1型糖尿病の方がほとんど

・低血糖:低血糖性昏睡

・腎症:尿検査、尿微量アルブミン、BUN、クレアチニンなど生化学検査

・動脈硬化症:総コレステロール、中性脂肪

・虚血性心疾患:インスリンの効きづらい状態、すなわちインスリン抵抗性を介して、相互に絡み合い動脈硬化を加速進行させる

・高血糖の状態はからだの抵抗力を落とすため、細菌感染がおこりやすくなります。さらに、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症などにより視力が低下してくると、傷などの足の変化に気づきにくく、放置したまま足潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)などの重大な病変(糖尿病足病変)に進行させる

治療

食事療法:摂取エネルギーを制限し、肥満を是正する。摂取エネルギーは、理想体重×25(高度肥満では20)kcalとする

運動療法:運動は高血糖や脂質異常症の是正に役立つ

経口抗糖尿病薬:スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬などを適宜使用する。

インスリン療法:1型糖尿病患者には必須である。2型糖尿病患者でも経口薬が無効な時や、重症な合併症を伴っているときにはインスリン療法が必要になります

経過・予後

腎不全や動脈硬化症などの合併症の有無と程度に左右されます。

糖尿病は一生の病気であり、あらゆる病気が合併しうるために、 その予後には血管障害のみならずさまざまな要因が関係しています。
その血管障害による死因は、全死因の40から70%を占め、今尚増加する傾向にあります。
特に、血管障害に伴う合併症は死因につながると言われています。

糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症が重なると死亡率があがります。そのほか、喫煙、飲酒、 ストレス、なども要因になります。社会活動を続け、運動不足にならないなど生活上の注意も必要になります。

アプローチ方法

食事療法
血糖値を下げる方法が食事

1)適正なエネルギー量の食事を心がける

2)1日3食、規則正しい食事を心がける

3)栄養バランスに気をつける

減らすもの:ごはん・パン・麺類・イモ類など糖質を多く含む食品

積極的にとるもの:肉・魚・卵などのタンパク質、食物繊維を多く含む野菜

野菜→汁物→タンパク質→炭水化物の順番に食べると、血糖値をコントロールしやすくなるとされます。

おすすめな食べ物:玉ねぎ、オクラ、バナナ、アボカド、納豆、青魚、酢

みかん、りんご、ブルーベリー(果物は1日200g、糖質量20gならOK)

おすすめな飲み物:牛乳、緑茶、コーヒー

※食事の記録と同じく、体重も定期的に測定して記録をしておきましょう。

運動療法

日本では糖尿病患者のほとんどが2型糖尿病ですが、これは生活習慣病です。過食、不規則な食事、運動不足、肥満などによって、糖尿病のリスクが非常に高くなっています。
糖尿病ではエネルギー源となるべきブドウ糖がきちんとエネルギーに変換されていません。運動することでエネルギー消費を促進し、肥満、内臓脂肪を抑制し、同時に筋力をつけることでインスリンの活動を促進することができます。

マッサージ・ストレッチ・鍼灸・機能訓練

マッサージ

足趾から膝上くらいまで足全体をマッサージ、そして足裏に膵臓や腎臓の反射区などがあるのでしっかり揉むと改善の可能性もあります

下腿の血液とリンパの流れを促すので下から上へ向かってマッサージも重要です

ストレッチ

長座前屈、アキレス腱伸ばし、肩甲骨回し、大腿四頭筋のストレッチなど

大きい筋肉をしっかり伸ばしていきます。

糖尿病の患者さんは運動習慣がない方が多い=体を動かす機会少ない=ストレッチもしない方多いので、毎日入浴後など体が温まっている時にTVを見ながらでもいいのでストレッチの習慣ができると柔軟性も出てきて、体を使うことが苦でなくなってきます。

鍼灸

糖尿病でよく使われるツボ

脾兪 天枢 百会 合谷 水分 陰陵泉 太白 腕骨 脊中 魚際 陽池

足三里・三陰交・地機は灸が効果あります。(※糖尿病の人は化膿しやすい傾向があるので、気をつけましょう)

機能訓練

有酸素運動と筋力運動は、すぐにブドウ糖を消費して血糖値を下げてくれるため、インスリン分泌に頼らなくて良いのです。さらに習慣付けることで、インスリンが作用しやすい体質になるといった効果もあります。運動をするタイミングとしてベストなのは、血糖値が上昇する食後30分以内です。

有酸素運動としては、ウォーキングがおすすめです。家の周りを1周するなど、朝か夕方に30分程度歩く。まずは階段の昇り降りから始めて、毎日運動をするよう心掛けることが大切です。

糖尿病の方は下腿がつりやすいと言われています。つま先立ちの上げ下げ運動は、下肢の筋肉を刺激するため、血行改善やむくみ取りに効果があります。

自分の体重だけを負荷とする低強度のスクワットを繰り返し行うと、筋肉の「質」に変化が起こります。ゆっくり90度になるまで膝を曲げて、2秒キープしゆっくり立位に戻りを10回を1セットとし、3セット(30回)週2、3日続けると血糖値が下がっていきます。

毎日の身体活動量を少しだけ増やすことからはじめてみましょう。

運動の時間が取れないなら、

・エスカレーター→階段登るようにする

・自転車→歩行にしてみる

これだけでも活動量が大きく違ってきます。

参考書籍

日本糖尿病学会

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細部に至るまで詳細記述があるのが書籍です。

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この記事を書いた人

とらこ
・鍼灸マッサージ師
(3児の母 トライアスロンに挑戦したいアラフォー)