ここでは、変形性股関節症について解説していきたいと思います。
概要・病態
骨盤側の寛骨臼(お椀状)と大腿骨の大腿骨頭(ボール状)を包み込む球状の構造になっています。
柔らかく弾力のある関節軟骨で覆われており関節の保護と滑らかな動きを助ける役割をしています。
この2つの骨を覆う軟骨が徐々にすり減り関節内の滑膜に炎症が起き、これに対応して骨軟化や骨曲形成などの骨増殖が起こり、股関節の変形と疼痛、運動制限を起こす進行性疾患になります。
先天性股関節脱臼の後遺症や臼蓋形成不全、関節軟骨が擦り始めて、最後には骨の変形をきたします。
※親戚に先天性股関節脱臼、股関節疾患の方がいる場合は股関節形成不全の可能性があると言われています。
①原疾患が明らかでない一次性変形性股関節症 (明らかな外傷や既往歴がないもの)15%(欧米の男性に多い)
②先天性股関節脱臼、同亜脱臼、臼蓋形成不全などの疾患に続発する二次性変形性股関節症 加齢、肥満、重い荷物をもっての作業が原因とされています(特に女性が多いです)
股関節の安定性=静的安定化機構×動的安定化機構
股関節における静的安定化機構:関節包の安定に必要
・関節窩の深さ
・関節唇
・腸骨大腿靱帯、恥骨大腿靱帯、坐骨大腿靱帯
股関節における動的安定化機構:股関節の安定に必要
・深層外旋6筋(上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、梨状筋)
・小臀筋
・腸腰筋、恥骨筋、短内転筋
症状、臨床所見
立ち、座り、夜間安静時痛、寝返り時、歩行時の股関節部痛や、前方に曲げたり内側に回すと疼痛が出るのが特徴です。
症状が進むと痛みも次第に強くなり変形が生じ、股関節の動きも制限され、跛行も目立ってきます。歩容はトレンデレンブルグ徴候陽性になります(筋力低下のため) ※股関節が痛いのに膝が痛くなることがあります。
関節包、骨を覆う骨膜、軟骨のすぐ下の骨(神経豊富)にも痛みを感じる神経分布で軟骨にはそれがありません。
軽症の先天性股関節亜脱臼や臼蓋形成不全は治療されずに放置されることがありますが、20歳前後で何らかの症状をきたします。主たる成因は加齢減少による軟骨変性と股関節にかかる体重の3倍の荷重がかかると言われています。
症状は3段階に分かれます
初期
変形が始まる前の臼蓋形成不全(骨頭の被膜が少ない骨盤になっている)などがある状態、もしくは関節の隙間が狭くなり軟骨が薄くなった状態です。しゃがむ、階段の昇降、立ち上がり、歩き始めに付け根の痛みが生じますが、歩いていると軽快してきます。
進行期
関節の隙間が狭くなり、軟骨が薄く硬くなってきます。棘のように骨が飛び出てきたり、骨のう胞が骨にできたりします。歩行時や動作時に痛みが強く、靴下を履く、足の爪を切る、正座や和式のトイレが困難になります。
末期
関節の隙間がなくなり、骨棘や嚢胞が目立ってきます。足の付け根が伸びなくなり膝頭が外を向くようになります。足の長さなども左右差が出てきます。
鑑別疾患
・特発性大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死の危険因子としては、ステロイドの服用が挙げられます。大腿骨頭の壊死が生じる段階では明らかな症状はなく、壊死が生じてから大腿骨に対しての負荷がかかるにつれて、数か月から数年の時間経過とともに大腿骨頭が潰れていき、痛みが急激に悪化と関節を内側にひねる動作をすると痛みが増強することも特徴です。また股関節痛以外にも腰、膝、でん部などの痛みも生じることがあります。
・リウマチ性股関節症(関節リウマチ)
股関節だけでなく手指関節も痛むことが特徴です。症状として、関節炎に伴う強張り、腫れと痛み、発熱が出ます。
診断
・レントゲン、CT、MRI、関節の動き・痛みなどを総合的に評価します。
・関節裂隙の狭小化
・軟骨下骨の硬化像
・骨嚢腫の出現
・骨頭の変形
・骨棘の形成
・臼蓋形成不全
治療
変形した関節を元通りに再生する治療法はなく、痛みや症状を和らげ、機能を回復させるのが治療の目的になっていきます。
・生活指導:股関節への負担を減らすために体重減量、杖の使用、長時間の立位・歩行の制限を指導
・補装具:補高装具を下肢短縮や内転拘縮例に用いる
・薬物:基本的には外用薬を補助的に用いて、原則として鎮痛薬の使用は控える
・原則:関節裂隙が完全に消失している末期の変形性股関節症には関節を切除する人工関節全置換術、または固定術(片側例に限る)を行います。
※関節裂隙が少なくとも一部に残存する場合(進行期まで)→関節を温存する骨切り術を考慮します。
※手術適応の判断:50代まではなるべく関節温存を心がけ保存的治療を行っても少しずつ症状及びX線初見が進行する場合、骨切りの術の適応があれば早めに手術を考慮します。しかし人工関節全置換術の適応の場合には、なるべく保存的療法により手術時期を遅らせるそうです。60代以降では日常生活に支障を及ぼす場合には人工関節全置換術を行う形をとっています。
手術のタイミングは?どんな手術があるの?
手術のタイミングは?
・日常生活に支障きたす
・痛みが強くて動くことが困難
・股関節を庇って膝や腰が痛くなる
※どれかが当てはまるのであれば手術を考える必要性があると言われています。
手術の方法は次の3つになります。
①股関節の形を変える手術:骨を切って股関節の形を変える方法
②人工関節置換術:進行期、末期の患者さん、痛みもなくなるし動きも良くなるが10年から30年しか持たないと言われています。50歳以下の患者さんには行わない方法
③関節固定術:関節の骨をつけて関節を動かなくしてしまう方法
予後
進行は緩徐なので保存的な療法でしばらく経過を観察して進行するようであれば、また、疼痛が強いようであれば観血的治療を考えていきます。
マッサージ・ストレッチ・鍼灸・機能訓練
マッサージ
下肢をメインにマッサージを行い、股関節の柔軟性を高めることを目的として、股関節周囲の筋肉、靱帯、腱を固まらないようにしていき、股関節の可動域制限も起こらないようにします。
大腿四頭筋
内転筋
大臀筋、中臀筋
大腿筋膜張筋
腸脛靭帯
下腿三頭筋
ハムストリング
ストレッチ
筋肉が弱くなるだけでなく、硬くなり、それにより一定の股関節の部位にストレスが加わりやすくなってきます。なので股関節の前後内外の筋肉のストレッチが大事になってきます。
腸腰筋ストレッチ
大腿四頭筋ストレッチ
内転筋ストレッチ
ハムストリングストレッチ
足首ストレッチ
外旋筋ストレッチ
鍼灸
股関節や腰臀部、下肢に出ている筋緊張や痛みの緩和を目的とし、股関節周囲を支持している筋肉の負荷を取り除いていきます。
※改善のためには股関節だけでなく、下腿や腰部、背中などの周囲の状態も確認する必要があります。
・鍼:陽陵泉・環跳・中腰・大腰・大腸兪・玉しん・築賓
・灸:行間・大都・陰稜泉・然谷・風市・丘墟
血液循環を良くし、リラックス効果もあり、炎症を抑える効果も期待できます。
機能訓練
痛みをやわらげたり、股関節を動かすために日常生活の負荷に耐えられるように必要な筋力を維持する目的で行います。(痛いからと言って動かさないでいると、股関節周りの筋力が低下し、筋肉も硬くなり動きも悪くなり、症状がますます悪くなってしまうため。)
股関節に痛みがあって動かすのがつらいときは、等尺性運動(関節を動かさずに筋肉を収縮させる運動)がいいと言われています。ゴムバンドを太ももか膝かすねか足首に巻き、ゴムバンドの締める力に逆らって股関節を広げるという運動です。
しかし過度な運動は避ける&股関節に負担かけすぎないが大切です。
※毎日継続して、少しずつ行うのがポイントです!!
・臀部の筋肉を鍛える運動
臀部の筋力低下を防ぎ、関節にかかる負担を減らします
ヒップリフト:8〜10回/3セット
スクワット:8〜10回/3セット
横向きで股関節外旋運動:8〜10回/3セット
・体幹の筋肉を鍛える運動
体幹の筋力をつけることで股関節だけを動かすのではなく、骨盤や腰椎を連動させた動きができるようになります。股関節にかかる負担を減らすことができ、痛みの改善や予防効果に期待出来ます
仰向けでももあげ:10回/3セット
サイドベンド:10回/3セット
両手挙上運動:10回/3セット
・貧乏ゆすり・
小刻みな動きが関節液の循環を改善し、軟骨に栄養が行き渡るようになることで、痛みと関節症の進行を抑えるのに効果的だと言われているようです。
・軽いウォーキング・
15分くらいゆっくり歩く
・水中ウォーキング・
水の浮力と抵抗力によって関節を守りながら筋力を鍛えられるので負荷がかかり過ぎずしっかりと運動出来ます。
参考書籍
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