疾患別アプローチ

脊椎圧迫骨折へのアプローチ方法

脊椎圧迫骨折とは背骨が押し潰されて変形してしまう骨折で、骨が弱いお年寄りに多いのが特徴的です。

下部胸椎(10番〜12番)から上部腰椎(1番〜3番)までの骨折が多いと言われています。

年齢とともに骨がもろくなり、尻もちをつくなどの軽い衝撃でつぶれる場合や、知らない間に徐々に体の重みを支えきれずに椎体がつぶれてしまうことがあります。閉経後の女性に多く、骨粗鬆症も大きな原因の一つと言われています。

70歳代の約30%、80歳代の約45%に椎体骨折が認められることが報告されています。

骨折が椎体の前壁にとどまる場合がほとんどです。脊椎圧迫骨折では骨が癒合しなくなる偽関節の状態が多く、強い背部痛のため寝たり起きたりが難しくなり、寝たきり状態へ移行してしまうこともあります。

脊椎圧迫骨折の種類

・楔状椎型:椎体の前縁の高さが減少する形

・扁平椎型:椎体の全体に渡って高さが減少する形

・魚椎型:椎体の中央が凹む形

骨粗鬆症とは

「骨粗鬆症」は骨の新陳代謝のバランスが崩れて、壊される骨の方が作られる骨より多くなってしまうために、骨が脆く壊れやすくなってしまう疾患です。骨粗鬆症の原因には、加齢・生活習慣(運動不足、食生活、喫煙など)、女性の場合には閉経後のホルモンバランスの変化などがあります。

症状

1)急性期症状 

ある時突然、背中や腰に強い痛みが起こります。前かがみになったり、動作をする時に特に痛みが強くなります。また、寝返りが打てなくなったり、仰向けに寝ることができなくなったりします。骨折部位を軽く叩くと痛みが誘発されるのが特徴です。動けなくなる程の痛さはなく「ちょっと痛い」くらいで痛みに気づかないうちに骨折していることもあります。

2)慢性期症状 

潰れた骨が固まると、痛みは次第におさまってきます。通常、潰れた状態で骨が固まってしまうため、背中が後方に弯曲して丸くなったり、背が低くなることがあります。後弯変形をきたすと立位のバランスが取りにくくなり、杖やシルバーカーなどに頼らないと、歩行が困難になってきます。骨折した骨がうまく固まらないことがあり(偽関節)、いつまで経っても腰痛や背部痛が残ることがあります。また骨が潰れたり変形して脊髄や馬尾神経を圧迫すると難治性の痺れ・痛みや下肢麻痺などの神経症状が残ることがあります。

この症状は脊椎圧迫骨折かも??

・強い腰の痛み

・寝返り時の痛み

・起き上がり時の痛み

・体を動かすときに激しい痛み

・骨折した部分は飛び出したような状態になる

・また潰れてしまった椎体が神経を圧迫して下肢の痛みや痺れ

・複数箇所の圧迫骨折で背中丸くなり身長低くなる

圧迫骨折が起きると何が起こる?

・骨が曲がる、変形する

・背中が丸くなり肺活量が減少、身体機能の低下

・動作がぎこちない

・寝返りや立ち上がるときに腰が痛む

検査・診断

レントゲン、CT、MR、骨密度検査

1)保存療法

→コルセットで固定し、ベッドで安静を保ちながら、痛み止めによる保存的治療で症状は軽快します。

2)手術方法

※上記の保存的治療を数週間実施しても、症状が緩和されず、腰痛、背部痛が遷延化する場合に手術方法が適応されるようです。

①バルーン椎体形成術(BKP):骨折した椎体の中に風船を膨らませセメント注入

→早期に椎体を形成出来るメリット、1週間程度の入院

②後方進入椎体固定術(TLIF/PLIF):ボルトを使って骨を固定する方法

→椎体を3カ所以上骨折している場合や脊髄を圧迫している場合に金属のスクリューにて固定

骨折後に注意すること

体を丸める、捻る動きは骨折部の回復過程を阻害することになってしまいますので極力避けましょう。

・靴の脱ぎ履き

・頭、顔を洗う時の前かがみ

・下の物を拾う、取る動き

・寝返り、起き上がりの動き

・体の伸びた姿勢を保つ

・足を持ち上げて靴を履く

・物を拾う時は足を曲げてしゃがむ

※意識することで骨折部の安静を保つ&再骨折のリスクを減らせます。

予後

急性期(受傷1週)、亜急性期(受傷2〜3週)、慢性期(受傷3週以降)に分けられます。

強い痛みが続くのは2〜3週間ほどで、その後は徐々に痛みは低下していきます。

(トイレや食事以外はベッドでの安静を必要とします。)

3週を経過すると痛みが残っていても積極的なトレーニングを開始します。

※圧迫骨折をすると骨折部位の上下の背骨がその後に圧迫骨折を起こすリスクが5倍になると言われています。

骨量が低い場合、食事療法(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウムをとる)や背中や下肢の筋肉を鍛えて転倒しないようにする運動療法、内服薬や注射(カルシトニン製剤)などによる治療を行います。

圧迫骨折予防と対策

予防策として

カルシウム・ビタミンDの摂取、適度な運動が必要です。

・成人のカルシウム必要量は600mg/1日で牛乳600ccに相当します。

・ビタミンDは『骨を丈夫にする』『免疫機能を調整する』働きがあります。

食材では鮭、いわし、マグロ、卵黄などに多く含まれています。

※ビタミンDが不足すると、骨や筋肉が弱くなる傾向があります。

1日20分程度、日光に当たることでビタミンDは体内で作ることができるので、散歩やウォーキングを行うのがオススメです。

マッサージ 鍼灸 機能訓練

マッサージ

骨折部位は触れず、関節周囲の筋肉が筋緊張している部分の筋肉を緩め、全身の血流を促します。血液やリンパの流れの促進、自律神経の調整、筋肉や筋膜の柔軟性の向上、自然治癒力の働きを促進させるように行っていきます。

鍼灸

圧迫骨折の周囲の筋緊張が強く出ているため、背腰部から臀部にかけて鍼灸を行い、筋緊張緩和と血行促進を目的として治療を行います。

機能訓練

・関節可動域訓練や筋力訓練

・下肢筋力向上やバランス能力向上のため歩行訓練

・弱った体幹の筋力を取り戻す

『片足立ち運動』

①出来るだけ背筋伸ばして、片足を5〜10センチ上げて1分間キープ

★左右1分ずつを3セット

【効果】

太もも、お尻の筋肉鍛えられる

背骨や大腿骨の骨の強化

バランス感覚を鍛えられる

『椅子スクワット』

①5秒かけてゆっくり立ち上がる

②なるべく手の力使わず、下肢、臀筋の筋肉使って立ち上がる

③立ち上がったら5秒かけてゆっくり座る(背骨に衝撃が無いようゆっくり)

★5回を3セット

【効果】

太もも、お尻の筋肉を鍛えられる

参考書籍

・運動器疾患の「なぜ?」がわかる 臨床解剖学

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この記事を書いた人

とらこ
・鍼灸マッサージ師
(3児の母 トライアスロンに挑戦したいアラフォー)